今月の花(十一月) 冬林檎
お稽古の時に手にしたのは姫林檎。秋も深まりつつある10月のはじめでした。
枝から垂れたたくさん柄の先につく姫林檎の実は、頂上はへこんでいないものの林檎をごく小さくしたような形で2~2.5センチくらいの大きさです。赤にうっすら緑色が残る実が特徴です。乾いてしまった葉は整理して実が下がるようにいけたら、と初心者には提案をしました。姫林檎の盆栽をみて、アメリカやヨーロッパの方は園芸種のクラブアップルに近いと言われました。
姫林檎が下がると、いよいよ林檎も本格的な季節を迎えます。
夏の太陽をたくさん浴びた「サンつがる」にはじまり、最後は11月から12月に収穫する「サンふじ」までが栽培の期間。ことに「サンふじ」は初めは少し青く熟度が十分でないものの2月くらいから甘味も増してくるので春先まで楽しめるとは、長野で林檎農家をしている方のお話でした。そのため適度な温度と湿度で管理した冷蔵保管が必要です。
その若いご夫婦は外国各地での生活ののち、リンゴ栽培をこの地で始めました。果樹を剪定した枝や稲わら、果物や野菜のくずを用いる規格外農産品の有効活用など環境を考え、長く林檎を味わってほしいということで栽培する林檎の種類は豊富です。
晩秋の林檎はいただいてみるとほかの時期のものよりずっしりとして、やや控えめの香りに対し、密な造りが口の中で確かめられます。冬林檎と聞くと私は孤高なイメージを持っていましたが、中身は季節と時間をめぐってきた記憶がにぎやかに混在しています。
アップルパイや焼き林檎にクリームやアイスクリームをのせて暖炉の前でいただいたらさぞおいしいだろう、そんな光景を勝手に想像していた頃、2018年のシードルがそろそろ飲み頃ときき早速オーダーしました。若いころをパキスタンで過ごした奥様が考案した、しょうがやカルダモン、シナモン、ナツメグを加えたリンゴのジャムと一緒に。
林檎の誘惑に負けるのはアダムとイヴ以来まったく変わっていないのです。(光加)